「強くなるペース」に悩んだら
今回は、最近よく話に出てきたことについて書いてみます。
テーマは「強くなるぺースに悩んだら」です。
強くなるペースについて
悩む要因
最近、お客さんや子どもたちの保護者の方から主に相談事としていただく話の中で「強くなるペース」に関することが増えています。これは確かに強くなることを目指している方やその保護者の方の立場からすれば、常に気になることの一つでしょう。
ただ、指導者の立場で考えるとこの「強くなるペース」はある意味個性のようなものです。個性ですからその人の考え方や性格、モチベーションの高さや目標として設定しているものに応じて全然違います。あくまで自分の「強くなるペース」は自分で決めればいいもので、他人に決めてもらうものではないのです。
ところが前述のとおり、この「強くなるペース」に関する相談事が後を絶ちません。そしてこの「強くなるペース」が悩みとなるケースには、だいたい次の二つのどちらかの要因が存在することがほとんどです。
それは、
- 結果が出ない(勝てない)
- 他人との比較で気になる
以上の二つです。
これらについて、それぞれ悩んだ時にどのように気持ちを持つべきか私の考えを書いてみます。
結果が出ない(勝てない)
将棋はゲームであり、ゲームである以上何らかの達成目標がそこには存在するといっていいでしょう。将棋の場合は単純明快で、自分が勝つことを目標として指し進めていくことになります。ですから、結果としての勝ち負けが最も気になる部分になるのは仕方のないことです。
将棋はどんな形であれ努力を続けていれば、その努力に応じた上達は見込めるものだと思います。しかし、その成果がいつ表に出てくるかのはっきりとした保証はありません。特に努力をしていればしているほど、結果が伴わないことに対する不安や苛立ちなどが悩みとなって出てくるのです。
このような場合は、自分自身に結果ではなく手応えを問うていくのがいいと思います。努力をする前と始めてからを比較したとき、そこにほんの僅かでも手応えの違いを感じるものがあるのであれば、確実に前に進んでいます。勝ち負けという結果だけに囚われてしまうとその手応えを見逃しがちなので、自分自身に感じる変化をしっかり掴みながら、焦らずやっていきましょう。
他人との比較が気になる
これは特に子どもたちとその保護者の方によくありがちなケースです。なぜなら、将棋には他人と比較しがちな基準が大きく分けて三つありますが、そのうち二つは子ども同士でのみ比較しやすいものだからです。
この比較基準となる三つは、
- 将棋を始めてから経った期間
- 学年(学生のみ)
- 段級や大会結果等の実績
だと私は考えています。
このうち三つ目の「段級や大会結果等の実績」は年齢等に関係なく比較されがちなものですが、最初の二つは子どもたち特有の事項でしょう。
将棋を始めてから経った期間
これは、同じぐらいの強さの子を比較するときによく用いられます。どのくらいの期間でその強さまでたどり着いたかが、センスや頭の良さということで語られがちです。
確かにそういう一面がないとは言いません。指導者側から見てもセンスや頭の良さを感じる子はやはりいます。ですが、結果的にそういう子が皆強くなっているわけではありません。
いわゆる才能的な部分だけで勝負できるのはある程度のレベルまでで、それ以上のレベルと勝負するためには将棋が強くならないといけません。そしてそのためには、やはり地道な積み重ねが必要なのです。
ですから、コツコツと地道な努力を続けている子が最後には生き残ると私は考えています。
学年(学生のみ)
これは、同学年とか高学年・低学年というグループでの比較で用いられます。ただ、たとえ同学年といっても将棋を始めた時期や将棋を学んできた環境が違えば辿り着いた強さも違って当然なので、そもそも一概に比べられるものではないでしょうし比べてもしょうがないものだと私は考えます。
カテゴリー分けされている将棋大会では同学年の強い子の存在が気になるのは仕方ないですが、自分がやってきたこと以上のものは出せないので、その培った力を全部出すことに専念した方がいいでしょう。
段級や大会結果等の実績
これも前述のとおり、将棋を始めた時期や将棋を学んできた環境、そして居飛車か振り飛車か等の戦法・戦型選択の違いで全然変わってくる部分です。強くなるペースがのんびりで最初はなかなか結果が出なくても、地道な努力を続けることにより結果が伴ってきて有名なアマ強豪になった、という例はたくさんあります。高齢者といわれる年齢になってから初めて一般大会の県代表を獲得した方だっていらっしゃいます。
自分なりの目標を設定して、それに向かって力を伸ばし足りないものを埋めていけばまず間違いなく強くなっていくはずです。強くなった先に結果があるという気持ちで頑張っていきましょう。
自分を追い込まない
以上、いろいろと書いてきましたが、これらはおそらく誰もが一度は悩むことではないかと思います。私も当然悩んだことありますし、悩んだ結果「将棋辞めてやる!」と思って一時期辞めたことが今までに3回ぐらいあります(笑)。
最近、指導者側の立場でこれらの悩みに出会うことが多いのですが、私が伺っていて思うのは「自分で自分を追い込んでいる感じだなぁ」ということです。
確かに比べる基準と結果が存在する以上、どうしても人から比較されることはありますが、自分と他人を比較する必要はないと思います。なぜなら、最初に述べたように「強くなるペース」は個性だと私は考えているからです。
他人の良いところを取り込むために比較する、という前向きなものならいいと思いますが、それ以外の比較は心が疲れていくだけのことが多い気がします。努力し続けることは大事ですが、休んだ方が良いと考えたら休むことも大事です。自分の心と相談しながら、自分のペースであり個性を守っていけばいいのではないかと私は考えています。
今回は以上です。
ご覧いただきありがとうございました。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません